和食はお箸づかいに始まり、お箸づかいに終わるといわれます。また日々の食事も、あらたまったお席でも、美しいお箸づかいができていか、そうでないかで印象が大きく左右します。マナーの講師のMasayoさんに、「上品に魅せる、美しいお箸づかい」を解説していただきます。
上品に魅せるお箸の取り上げ方
お箸は必ず「三手」で取り上げます。
1.右手で上からお箸の真ん中あたりをそっとつまんでとりあげます。
2.左手でお箸を下から支えましょう。
3.上にかぶせている右手をお箸に添って右端へ滑らせ、右手をお箸の下にもってきて持ち替えます。
この三手を、指先を揃え、流れるようにすると格段にエレガントで、美しい所作になります。
お箸に集中しすぎて姿勢が悪くなることがないようにしましょう。
すっと背筋をのばした美しい姿勢のまま、お箸を綺麗に取り上げてくださいね。
お箸を置くときのコツ
先ほどお伝えしたお箸を取り上げる流れを反対にします。
1.左手をお箸の下に添えて持ちましょう
2.右手を右端まで滑らせたら、お箸を上から持ちます。
3.左手を離し、お箸を箸置きの上にやすめましょう。
上品に魅せる食べ方のコツ
「箸先5分、長くて一寸」と言う言葉をご存知でしょうか?
一寸は3cm、5分はその半分です。お箸は先の2~3cmを使うことを意識しましょう。
和食を美しく頂くには、あまり箸先を汚さないことがポイント。現代は4センチくらいまでOKと言われますが、これがけっこう難しいのです。
あまり神経質になる必要はありませんが、一口のサイズが大きくなりすぎないよう気をつけましょう。一緒にお食事をする方と、食事や会話を楽しむためには、会話を遮らない適量を口に運ぶことが大切なのです。食事のマナーは、ご一緒する方たちとのお料理や会話を楽しむためのものでもある、と意識すると良いでしょう。
箸置を使うのがマナー
日々のお食事でも箸置を使う習慣づけることをおすすめします。お箸も休ませる場所が必要で、箸置がないとお箸をお椀の上に渡して置いてしまうなどのマナー違反にもつながってしまいがち。
箸置も色々なものがあり、季節感に合わせた箸置をセレクトすれば話題のひとつにもなり、会話が弾むきっかけになったりもします。
お箸使いのタブーとは?
実はお箸使いには様々なタブーがあります。例えば、どのお料理を食べようかと、お箸を持ってあちこち迷う「迷い箸」。お箸を椀の上に渡して置く、「渡し箸」。また、お箸で食べ物を突き刺す「刺し箸」もマナー違反です。他にも器やお皿などをお箸で引き寄せる「寄せ箸」や、箸先を口に入れて舐める「ねぶり箸」もお箸使いにおいてのタブーとされる行為です。
このような使い方をすると、上品さが損なわれ美しさも半減し、一緒に食事をしている方が不愉快な気持ちになる原因にもなってしまいます。普段こうした間違ったお箸使いをしていないか一度点検したり、お箸使いのタブーを覚えておくと良いでしょう。
お祝いの席でのお箸マナー
お箸は「神様と人を結ぶ橋渡し」でもあり、神様と人を結びつける大切な道具としても考えられてきました。例えば、おせち料理は年神様にお供えし、それを下げていただくもので、新年を祝い、一年の恩恵を授かるために、年神様と食事を共にするためのもの。
そしておせち料理などを食べるときに使う祝い箸は、両口箸、柳箸、俵箸とも呼ばれ、お祝い事には欠かせないお箸です。両端の先端が細くなっているのが特徴的なつくりで、祝い箸の一方は神様用、もう一方は人が使うためとなっているのです。両方使えるからといって、ひっくり返して取り箸にするのはマナー違反。
お箸には面白い豆知識があります。祝い箸は、お祝いの席で折れたりしないように丈夫で折れにくい柳の木が使われていたり、「俵箸」と呼ばれるのは五穀豊穣を願って米俵を模して中ほどが太めになっているなど、様々なところに細やかな心遣いがあるのです。
いかがでしたか? 今回は上品に魅せるお箸づかいから、お箸づかいのタブーまでを詳しく解説しました。食事をしたときに上品で美しいお箸づかいができるのと、そうでないのとでは印象に大きな差ができてしまいます。見た目のお箸づかいだけでなく、お箸という日本特有の文化を大切にし、お箸にこめられた想いを感じながら、丁寧に美しく使ってみてくださいね。
マナースクール Mエレガンスアカデミー 代表
グレース・ケリーも卒業生であるフィニッシングスクールにて幅広く研鑽を積む。幼少よ り茶道・華道を嗜み、着物着付け講師の資格も持つ。上質で心掴むマナー・立ち居振る舞 い・コミュニケーション術の講座を開催。
著書:「オトナ女子のふるまい手帖」なぜか大切にされる女性になるマナーと心得 56