ビジネスシーンやプライベートで、手土産を渡す機会を一度は経験したことがありますよね。そんなとき、お相手によってどんなアイテムをセレクトすれば正解なのか、いまいちよくわからないと悩んだことはありませんか? また、手土産を渡すとき、どうやって渡せばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、手土産を選ぶ際に気を付けたいポイントと、エレガントな渡し方を、マナー講師のMasayoさんに教えてもらいましょう。
相手が負担に感じない、消費しやすいという配慮を
何よりも、まず「お相手に喜んでいただけるものを」ということを意識するのがコツ。基本的には食べ物や飲み物など、残らない物がおすすめです。さらに、お相手が負担に感じたり、お返しの心配などをさせてしまうような、あまり高価なものは避けましょう。お相手との関係によっても変わりますが、2000円~3000円程度のお菓子が相場です。また、お相手の嗜好や家族構成、日持ちも含め、無理なく消費できる量を考えましょう。手土産がお持たせとして出されることを想定する場合もあります。
目上の方など、気を使うお相手の場合には、名産品や季節のもので上質なもの、ご家族で楽しめる、日持ちのするお菓子などをマスト。気のおけない友人同士などの関係であれば、事前に相談しても良いでしょう。ビジネスのお相手であれば、職場の皆さんで楽しめるよう、世代を問わず好まれる銘菓、日持ちがするもの、配りやすい個包装のお菓子などがおすすめです。お相手のことをどこまで考えられるかが大切ですから、個包装のものでなくても、懐紙を添えて差し上げたりするのも素敵ですね。分ける時に、見た目にも上品ですし、そのまま包んで持ち帰っていただくこともできます。
避けたいのは、訪問するお宅の近所で購入すること。間に合わせに用意したような印象となり、お相手を想う心が伝わりません。手土産には土地の産物を持参するという意味もあります。例えば関西在住の人が、関東や九州の友人に贈る場合、できるだけ関西ならではの物を選ぶのがおすすめです。
また、手作りの手土産は、手間暇をかけ、心がこもったものとは思いますが、必要以上になれなれしく感じるなど、人によって受け取り方や感覚が異なります。ですから、初めての訪問や顔合わせなどのあらたまったシーンでは避け、何度も行き来する間柄になってからの方が無難でしょう。
エレガントな手土産の渡し方
お渡しするタイミング
お宅に訪問する場合、客室に通され、正式な挨拶をしてからお渡しします。生ものや溶けやすいもの、冷蔵庫に入れる必要があるものなどは玄関先で事情を伝え、渡しても良いでしょう。相手にお渡しするまでは、和室なら自分の座っている脇に、洋室なら椅子の上に置きます。洋室では紙袋などに入っていても、床には置かないと心得ましょう。
また、何人かの人が集まるシーンでは、手ぶらの方が気にされないよう、あえてタイミングを見計らい、そっとお渡しするなどの気配りも大切です。決まり通りのお渡しの仕方ではなくても、ご一緒する方の誰もが、心地よく過ごせるような配慮ができれば素敵ですね。
紙袋や風呂敷は、はずしてお渡しする
手土産は、必ず中身を紙袋や風呂敷から出してお渡しします。紙袋や風呂敷は運盤用で、ほこりよけの役目もあるため、そのままお渡しするのは失礼にあたります。必ずはずしてから渡しましょう。はずした紙袋は持ち帰るのが通常ですが、最近は紙袋もとても素敵なデザインの物も多いので、「お使いになりますか?」とお伺いしたり、「荷物になるのでおいていって下さい」と言われたら、お言葉に甘えて良いでしょう。外などで、紙袋のままでお渡しした方がよい場合は、「紙袋のまま失礼いたします」と、一言を添え、紙袋の底と持ち手の付け根あたりに手を添えてお渡ししましょう。
風呂敷は、どんな形のものも自由自在に包めて繰り返し使える優れもの。お中元やお歳暮を持参するとき、風呂敷に包んでお届けすれば、所作まで美しく見え、贈り物の格も上がります。最も礼儀正しい包み方として贈答品を持参するときに用いるのが「平包み」という結び目を作らない包み方です。意外と出番が多いのでマスターしておくと重宝しますよ。
お相手に正面を向ける
紙袋や風呂敷から取り出した手土産は、必ず一旦は自分のほうに向けて置きます。品物を確認してから、時計回りに、90度まわし、もう一度90度まわして、相手に正面を向けてから両手で差し出します。この丁寧な所作で、より相手を想う心が伝わりますよ。
渡す時は言葉を添えて
何も言わずに渡すのではなく、「お気に召すとよろしいのですが」、「ぜひ召し上がっていただきたくて」、「心ばかりですが」、「とても美味しいと聞きましたので」など、一生懸命、お相手のことを考えて、選んだ気持ちを言葉で伝えましょう。
手土産は相手とのコミュニケーションツールの一つでもあります。人の好みは本当にそれぞれですから、普段のお付き合いの中から、どのようなものが好きなのかを事前にリサーチしておくことも、手土産を上手に選ぶポイントのひとつ。また、迷った時は、ここのお菓子だと安心といった、自分の中の定番を持っておかれるのもひとつです。ご自身が良く知っているものや、大好きなものだと、その魅力も伝えやすいため、共感してもらえると嬉しかったりしますよ。今回ご紹介したポイントを参考に、エレガントで心伝わる手土産の渡し方をマスターしてくださいね。
マナースクール Mエレガンスアカデミー 代表
グレース・ケリーも卒業生であるフィニッシングスクールにて幅広く研鑽を積む。幼少よ り茶道・華道を嗜み、着物着付け講師の資格も持つ。上質で心掴むマナー・立ち居振る舞 い・コミュニケーション術の講座を開催。
著書:「オトナ女子のふるまい手帖」なぜか大切にされる女性になるマナーと心得 56